山あいの温泉街、不思議旅
登場キャラクター
九条 日向
(くじょう ひなた) いつも先頭を歩き、迷いそうな路地にも笑顔で飛び込んでいく。元気に髪を揺らしながら、「ねえ、あっちの方に何か面白そうな場所があるよ!」と、この奇妙な温泉街でも変わらない冒険心を見せている。
氷室 詩織
(ひむろ しおり) 艶やかな黒髪を揺らし、誰かが困る前にそっと手を差し伸べる、グループのまとめ役です。その穏やかな微笑みは、閉ざされた温泉街の不安を忘れさせるような安らぎを皆に与えています。
柊木 友香
(ひいらぎ ともか) 温泉街の売店を見つけるたびに、いつの間にか買い食いしたものを頬張っている食いしん坊。髪を揺らし、愛嬌たっぷりの笑顔と、ついつい買い食いをしてしまうマイペースさに、皆がふっと肩の力を抜いてしまうような、グループの愛されムードメーカー。
ストーリーのはじまり
山道の曲がりくねった果て、深い霧の中から突如として姿を現した温泉街。あなたは車を停め、古い旅館へと向かった。
ふう、やっと着いたね。長距離の運転、お疲れ様。
みんな、まずは荷物を置いて浴衣に着替えてから温泉街を散策しましょう?
賛成!温泉街の散策、何だかワクワクするよね!
旅館に荷物を置き、浴衣に袖を通す。窓から覗く温泉街は、西日に照らされ、どこか時代が止まったかのような幻想的な赤に染まっていた。
手早く支度を済ませた四人は、西日に揺れる提灯の並ぶ温泉街の散策する。どこか時間が止まったような懐かしい風景が広がる。
日向は先頭を切り、足早に石畳を踏み締めていく。その後ろでは、友香がどこで見つけてきたのか、ホカホカと湯気を立てる名物の肉まんを嬉しそうに頬張っていた。
ちょっと、友香! また食べてるの? さっき晩御飯のお品書き見て感動してたばかりでしょ。
はふっ、あふっ……、街並みもいいけど、やっぱり温泉街といえば食べ歩きだよね!
ふふん、この肉まん、熱々で中から肉汁がじゅわっと出てきて最っっ高~♪
友香が街の名物である肉まんを手に、満面の笑みで頬張り続けながら無邪気に歩いている。
ねえ、あっちの路地の先に何か面白そうな場所があるよ!
一行は路地を進み、小さな橋の上に出る。肉まんを手にしていた友香が、いつの間にか美味しそうに最後の一口を頬張っている。
もう、食いしん坊だなあ。さっき夕食の懐石料理が楽しみって言ってたのに、そんなに食べてたら入らなくなっちゃうぞ~?
日向が冗談めかしながら、ぷくっと膨らんだ友香のほっぺを指先でむにゅっと引っ張る。二人のじゃれあいに、詩織がそっと口元に手を当てて楽しそうに微笑んだ。
ふふっ、二人とも仲が良いわね。さあ、ここで記念撮影しましょう。夕焼けがすごく綺麗だから。
古い橋の欄干に身を寄せ合い、詩織は持参した自撮り棒でスマホのシャッターを切る。背景に広がる温泉街は、今この瞬間だけは、四人のための箱庭のようだった。
みんな集まって。……はい、チーズ!うまく撮れたわ。大事な記念ね。
朱塗りの橋の上で、夕空の温泉街を背景に四人で写真を撮った。足元では野良猫が喉を鳴らし、こちらの足をくすぐってくる。
あ、猫がいるよ!なでなで~……すごく人懐っこい子だね。
野良猫は不思議と警戒心を見せず、日向の足元でお腹を出して寝転がっている。その毛並みの温かさと、街の熱気が混じり合う。
やがて足早に日が沈み、温泉街が夜の顔へと切り替わった。四人は満足げに旅館の客室に戻ると、窓の外では遠くから打ち上げ花火の音が響き始めていた。暗闇に開く大輪の花が、部屋の中まで鮮やかな色に染め上げていく。
夜闇を切り裂いて、赤、青、黄色の光が四人の顔を交互に照らし、それぞれの瞳に幻想的な残像を残していく。
すご~い…!!! 部屋から見えるなんて最高だよ!一生忘れられない思い出になりそう。
うん、一生忘れられない夜になりそう。花火、綺麗だねえ。
本当ね。ずっとこの夜が続けばいいのに…。
何言ってるの、明日の朝には美味しい朝ごはんが待ってるんだよ!
みんなの笑い声が部屋に溶け合う。
やがて花火が終わると、友香が期待に満ちた目であなたを振り返った。
ねえねえ、メニューにあった懐石料理って何が出るのかな?地元の特産品とか、豪華なお刺身とか出ると思わない?
期待に輝く友香の瞳を見つめる。それが後の記憶の唯一の楔になるとは知る由もなく、あなたは言葉を選ぶ。