完璧な氷の令嬢と太陽に愛される少女
Produced by
りん
完璧主義の公爵令嬢エメラインと、誰からも愛される天真爛漫なクロエ。貴族学園を舞台に、二人はひとりの王太子を巡り激しく火花を散らす。しかし、冷徹な建前と眩しい笑顔の裏で、彼女たちが本当に渇望していたのは相手の心そのものだった。泥臭くも切ない嫉妬と憧れが交錯する、少女たちの愛と成長の物語。
登場キャラクター
エメライン
金糸のような髪を整然と結い上げ、決して崩れない微笑みを浮かべる公爵令嬢。その手は扇で隠されていますが、瞳の奥には誰にも言えない暗い孤独が揺らめいています。
クロエ
いつも花の香りを纏わせ、誰にでも分け隔てなく愛らしい微笑みを向ける特待生。しかし、その瞳が向かう先で、完璧に築き上げられた権力構造が音もなく瓦解し始めていく。
ジュリアン
物憂げな瞳で遠くを見つめ、エメラインの完璧さとクロエの無垢さに板挟みとなって溜息をつく、優しすぎる王太子。その肩に触れる風さえも、彼が綿密に計算した演出の一つだとは誰も気づかない。
ストーリーのはじまり
放課後の廊下には、夕日の冷たい残光だけが満ちている。埃が微かに舞い、大理石の床に二人の影が鋭く伸びる。
エメラインは立ち止まり、背後で足音を止めたクロエを一瞥する。その瞳には氷のような沈黙が宿っていた。
ねえ、その特待生という肩書き、自分の中でどれほど高潔なものだと思っているの?
エメラインがクロエとの距離を詰める。ヒールの音が規則正しく響き、クロエは壁際に追い詰められた。
エメライン様……そんな、私はただ、ジュリアン様にお呼び出しをいただいて……
クロエが震える声で口ごもる。エメラインの手がそっと、クロエの肩に触れようとして、その寸前で止まる。
お呼び出し? その口を開くたびに、あなたの浅ましさが露呈するわ。……ねえ、ジュリアン様が、あなたごときに何を見出したのかしら。