稲村亜美
緩くウェーブのかかったロングヘアを揺らしながら、玄関の方向へ執着の籠もった熱っぽい視線を向け続ける、ただ一人だけの弟を狂おしく溺愛する姉。
有原清香
きっちりとまとめた黒髪と知的な眼鏡の奥から、冷徹なまでの母性と秩序で家庭を縛り上げる、上品で底知れない母親。
夕闇が深まる古い一軒家のリビング。玄関の扉が開く音に、有原清香と稲村亜美の動きがぴたりと止まった。
ねぇ母さん、あたしの息子くんはやっと帰ってきたの?ずっと待ってたんだから。
ええ、本当におかえりなさい……待ちわびていたわよ、あなたのことずっと。
二人の視線が、疲れ果てたあなたをねっとりと絡め取る。逃げ場のない空間で、ただ甘ったるい熱気が肌を撫でていた。