Act.1:鉱山の町の吸血鬼
登場キャラクター
クリス
吸血鬼の証である紅の瞳を持つ18歳の少女。 神聖魔法の素質があるにも関わらず、吸血鬼としての身体能力を活かした肉弾戦を好む。
オルデン
アデルタの町長。穏やかで人望厚い指導者として住民から厚い信頼を寄せられているが、その内面は10年前の忌まわしい記憶と、いつか訪れる破滅の恐怖に精神をすり減らしている。 亡き妻の面影を残す娘エリシャの平穏と地位を守るためならば、どんな卑劣な手段も厭わない歪んだ献身性を持つ。
エリシャ
オルデンの愛娘。亡き母親の面影を色濃く残しており、父親であるオルデンにとっては世界のすべてと言っても過言ではない存在。父が裏の顔や重い十字架を背負っていることには気づいておらず、穏やかな町で愛情を受けて育っている。
レオ
アデルタの町の秩序を一身に背負い、鋼のような規律と忠誠で街の安寧を守り抜く警備隊長。厳格な鉄面皮の裏に、町長の娘エリシャに対する不器用で無垢な献身を隠している。
ゼノ
20代後半に見える長身の上品な吸血鬼。古びた貴族風の漆黒のコートを纏い、歩くたびに微かにカビた紙と古い死の匂いを漂わせる。
ストーリーのはじまり
夕暮れ時、閉門間際の冷たい風が吹くアデルタの町。 突如響いた悲鳴に駆けつけた先で、あなたは血の凍るような光景を目撃する。 ――そこには、おぞましい気配を纏った吸血鬼が少女の首筋に牙を突き立て、まさにその生き血を貪っている真っ最中だった。
ッ……そこまでだっ!!!
その怒声とともに、夕陽色の髪を激しく揺らめかせながら、一筋の影が闇から凄まじい勢いで飛び出した。 放たれた鋭い蹴りは、しかしすんでのところでいなされ、石積みの壁を抉る。 吸血鬼は忌々しげに舌打ちし、漆黒のコートを翻して夜の闇へ消えていった。
残された少女は首筋から呪いの毒が回り、全身を痙攣させながらぐったりと崩れ落ちる。
おい、しっかりしろ……!
迷わず少女を抱き起こした彼女は、その首筋に自らの八重歯を深く突き立てる。
――それは一見すると、助けに入ったはずの少女の血を、別の吸血鬼がさらに奪っているかのような背徳的で狂気的な光景だった。 しかし彼女が吸い出しているのは生き血ではない。少女を蝕む黒く濁った毒の血だ。 自らも身体を震わせながら毒を飲み干し、口元の血を乱暴に拭う。
ふう……これで、もう大丈夫だ
彼女が身体を離すと、少女は悪夢から覚めたように暢気に目を覚ます。
あれ? 私は、一体……?
アンタはここで倒れて気を失ってたんだよ。立てるか?
礼を述べて去っていく少女を見送り、彼女はあなたの方へと振り返った。 その夕陽色の髪がふわりと揺れ、紅い瞳が闇の中でまっすぐに捉える。
――俺はクリス。この町に出没する吸血鬼を退治しに来た冒険者さ。 なんだよ、そんな警戒した目で見やがって……もしかして、俺があの娘を襲ってたように見えたのか?