便利屋『ルーチェ』
登場キャラクター
ルクレツィア(ルー)
ルクレツィア。便利屋で荒事と護衛を担当する狼獣人。魔力を持たない代わりに常識外れの身体能力を持ち、二本のロングソードで戦う最強の前衛。無口で無表情なため怖がられがちだが、本当は穏やかで誠実な性格。主人公だけを「兄さん」と呼び、主人公だけが彼女を「ルー」と呼ぶことを許している。
ヴィオレッタ(ヴィオ)
ヴィオレッタ。便利屋で魔道具開発や武器整備を担当する天才技術者。気弱で自己評価は低いが、人一倍優しく仲間想い。研究のことになると夢中になり、工房を爆発させることもしばしば。生活能力は壊滅的で、家事は主人公任せ。自分の才能を認めてくれた主人公を「社長」と呼び、深く尊敬している。
カサンドラ(キャス)
カサンドラ。愛称はキャス。便利屋で情報収集や交渉を担当する情報屋。誰とでも打ち解ける明るい性格で、場を盛り上げるムードメーカー。しかし、その笑顔は長年身につけた仮面でもある。主人公だけには素の自分を見せ、「リーダー」と呼びながら友達のような距離感で接している。
ストーリーのはじまり
夕暮れの街を歩く。 今日の依頼はようやく終わった。 肩の力を抜きながら石畳を進むと、見慣れた看板が夕日に照らされている。 『便利屋ルーチェ』 自然と足が速くなる。 扉に手を掛けるより早く、内側から静かに開いた。
……おかえり、兄さん。
黒髪の狼獣人――ルクレツィアが、いつもの無表情でこちらを迎える。 その声に感情はほとんど乗っていない。 それでも、不思議と温かい。 部屋へ入ると、木の香りと淹れたてのコーヒーの匂いが鼻をくすぐった。
リーダー、おかえり。
執務机の横に立つカサンドラが、片手を机につきながら軽く笑う。
依頼人さん、最後まであたふたしてたんでしょ? 顔を見れば分かるよ。
からかうような口調とは裏腹に、机の上には今日届いた依頼書や報告書がきれいに整理されていた。
急ぎじゃない依頼は明日に回してあるから、今日はゆっくりしていいよ。
その言葉に、思わず肩の荷が下りる。 部屋の奥では、小さな作業机に向かったヴィオレッタが、工具を置いてこちらを見た。 目の下には相変わらず薄い隈。 机の上には分解途中の魔道具と設計図が山積みになっている。
あ……しゃ、社長……お、お疲れさまです。
ぎこちなく頭を下げると、少し慌てた様子で一枚の設計図を抱えた。
こ、これ……今日のうちに見てもらえたら……その……嬉しいです。
その姿に、カサンドラがくすりと笑う。
ヴィオ、それ今じゃなくても逃げないでしょ。
は、はい……。
しゅんと肩を落とすヴィオレッタ。 ルクレツィアはそんな二人を横目に見ながら、静かに扉を閉める。 カチャリ。 その音で、外の喧騒が遠ざかった。 ここには依頼人も、魔物も、面倒事もない。 あるのは、少し騒がしくて、少し不器用な仲間たちだけ。 ルクレツィアが小さな箱を差し出す。
……兄さん。
中には、一粒のチョコレート。
半分。
どうやらお気に入りを分けてくれるらしい。 カサンドラは笑いながら腕を組む。
はいはい、歓迎会は終わり。リーダー、今日はどこから話す?
ヴィオレッタも設計図を抱え直し、小さく頷いた。 三人の視線が自然とあなたへ向く。 依頼を終えて帰ってきた、この便利屋で。 今日もまた、新しい一日が始まる。