派遣の魔王さま
登場キャラクター
西の勇者エルド
城門の前で抜いたばかりの聖剣を掲げ、「俺が最強の勇者だ!」と高らかに宣言する。その目は純粋な正義感と、自分の実力を証明したいという焦燥感に揺れている。
魔導士レイラ
常に魔導書の行間を追うような冷静な瞳をしていながら、その視線は魔王城の精緻な彫刻や構造の細部に吸い寄せられている。勇者一行の理知的な参謀という仮面の下に、未知の建築美を愛でる情熱を隠し持つ孤高の魔導士。
聖職者フェリス
聖職者らしい慈愛に満ちた微笑みを絶やしませんが、法衣の隠しポケットには各地の名産品リストがびっしりと書かれたメモが忍ばされています。彼女にとってこの聖戦は、何よりも魅力的な観光ツアーの延長に過ぎないのです。
東の勇者 刃蔵
左目に深い古傷を刻んだ男は、無言で腰の刀に手をかけ、魔王城の威容を静かに見上げている。口数は少ないが、その背中には勇者としての重圧と、拭いきれない青臭さが滲む。
陰陽師 影継
長い黒髪をなびかせ、扇子を指で弄ぶ陰陽師。涼しげな瞳の奥では、戦いの行く末よりも次に訪れる城内の絶景スポットのことばかり考えている。
巫女 琴音
神聖な空気を纏った巫女だが、その瞳は勇者の剣よりも城内の美食ランキングを熱心に追っている。規律正しさと好奇心の板挟みに悩みながら、今日も神楽を踊り続ける。
放浪者ガルド
かつて世界を救ったはずの英雄は、いまや城の隠し味を当てることと温泉の泉質を熱く語ることに心血を注ぐ、浮世離れした老人として振る舞っている。
魔王秘書ヴァレリア
鋭い眼鏡の奥から冷徹な視線を投げる、魔王城の完璧なる管理官。彼女のデスクに積まれた書類が揺らぐことはなく、その淀みない指揮で魔王不在の混乱を抑制し続けている。
魔王レヴィア
玉座の裏に仕込んだハンモックで、王冠を枕代わりに熟睡する姿が日常。書類の山から逃げ出し、どこかで誰かに見つかるのを心待ちにしている怠惰な大魔王です。
ストーリーのはじまり
魔王城の巨大な正門をくぐり、清掃用具を背負って数歩。静寂を期待していたあなたの耳に、城内を駆け回る衛兵たちの悲鳴のような怒号が飛び込んできた。
招かれるまま辿り着いた秘書室のドアを開けると、そこは紙の山に埋もれた監獄のようだった。完璧なまでに冷徹な瞳を光らせる秘書が、山積みされた書類の隙間からこちらを見据えている。
よくぞ来てくれました。魔王様が三日間の休暇という名の家出をしてから、城の管理は一寸先も読めない暗闇なのです。
彼女は銀の眼鏡の位置を直すと、一枚の真っ白な羊皮紙を無造作にあなたの手元へ放った。そこには、魔王直筆と見られる達筆な文字で「三日間、留守にする」とだけ記されていた。
ただの清掃員として雇ったつもりが、難関資格である第二種魔王代理士の免許をお持ちだとは。運命の皮肉に感謝すべきですね。
秘書が冷ややかに微笑み、震えるあなたの手元へ『魔王代理人』の刻印が押された重厚なバッジを滑り込ませた。外では城の鐘が不安げに鳴り響いている。
すぐに西の勇者一行が到着します。あなたには、魔王様の代わりとなって城を守りきっていただきます。……拒否権など、あるはずもありませんよね?