異世界転移 ~攻撃能力ゼロ、その他は全能の救世主~
登場キャラクター
聖女セラフィーナ
種族を問わず傷ついた者を救い続ける24歳の聖女。卓越した治癒能力と深い慈愛を持ち、人間族だけでなく魔族、エルフ族、ドワーフ族、獣人族からも厚い信頼を得ている。争いが始まる前に皆を救う道を求め、古の「救世主召喚の儀式」を行い、異世界から主人公を召喚した。以後は旅に同行し、案内役、仲介役、治療役として穏やかに主人公を支え、種族を越えた協力と救済の道を共に探していく。
王女エレノア
アルセリア王国の第一王女。27歳。食料備蓄、農政、物流、税、公共事業など国民生活に関わる実務へ深く携わる、穏やかで聡明な王女。人間族だけでなく魔族や他種族の事情にも理解を示し、主人公の力を国だけで独占せず、大陸全体の救済へ生かしたいと考える。セラフィーナやレオンハルトと協力し、人々が安心して暮らせる未来を築こうとしている。
騎士団長レオンハルト
アルセリア王国騎士団長。41歳。長年にわたり国境警備、護衛、治安維持、災害救助などに携わってきた穏やかで頼れる指揮官。剣は戦うためではなく人々の暮らしを守るためにあると考え、主人公の「誰も傷つけず守れる力」に深い希望を抱く。王女エレノアや聖女セラフィーナと協力し、軍事と安全の視点から救済を支える。
商人ミレイユ
大陸各地に商会と物流網を持つ43歳の大商人。食料、資材、薬品、生活物資を必要な場所へ届ける物流と市場の専門家で、信用と長く続く取引を何より大切にする。主人公の万能の救済力を、人々の暮らしや産業を支える仕組みへつなげる役割を担い、王女エレノアや各地の専門家と協力して大陸の復興を支える。
ドワーフ技師ドーラ
グラニア坑邦連合出身の熟練技師。土木、建築、採掘、水路、測量などに通じ、王都や各地の復旧工事に携わる。主人公の規格外の施工能力に大きな可能性を感じ、専門知識と組み合わせて安全で長く使える仕組みへつなげる役割を担う。明るく親しみやすく、現場では誰より頼れる職人気質の女性。
エルフ族の研究者フィリア
大陸各地の環境異常を調べるエルフ族の研究者。地下水、地質、森林、生態系、魔力循環、古代文献に詳しく、干ばつや水源枯渇、森林衰退、鉱山異常の関連性を探っている。静かで穏やかな知性を持ち、主人公や仲間と各地を調査しながら、まだ誰も知らないルメリア大陸の異変の正体へ少しずつ近づいていく。知識を救済へつなげ、人々と自然が共に生きられる未来を目指している。
獣人族長レグナ
ヴァルガ草原に暮らす狼獣人族の族長。34歳。大柄で力強い外見とは対照的に、穏やかで包容力に満ちた男性。水場、牧草地、家畜、集落の暮らしを守り、他種族との協力にも前向き。近年続く水源減少と草原の衰退に心を配り、主人公や仲間たちと力を合わせて土地の再生を目指す、頼れる守護者のような人物。
魔王アシュラド
ノクティア魔王領を治める46歳の魔王。深刻な食糧不足に苦しむ民を守りながら、人間族との全面戦争を避ける道を模索している。穏やかな威厳と強い責任感を持ち、種族間の長い争いを次代へ残したくないと願う統治者。主人公の「誰も傷つけず救える力」に希望を見いだし、人間族との協力と魔王領の再建を進めようとしている。
魔王軍総司令官ザハル
ノクティア魔王領の魔王軍総司令官。52歳。軍務だけでなく物資輸送、救助、復旧支援まで担う、面倒見の良い穏やかな指揮官。民や兵士を守る責任感が強く、戦争より生活の安定を望んでいる。魔王アシュラドを長年支え、主人公の誰も傷つけず危機を止める力を高く評価し、魔王領の再建へ協力する。
魔族外交官ネフィリア
ノクティア魔王領の外交官で、魔王アシュラドの妹。31歳。柔らかな物腰と高い調整力を持ち、人間族をはじめとする他種族との対話を担う。魔王領の苦境を伝えながらも相手側の事情を尊重し、双方が続けられる協力関係を築こうとする。主人公の救済力を種族間の架け橋として捉え、交易や支援、交流の広がりを支えていく。
ストーリーのはじまり
ここは、多種族が暮らす巨大大陸――ルメリア大陸。 人間族、魔族、エルフ族、ドワーフ族、獣人族。異なる姿と文化を持つ人々が、それぞれの国や共同体を築き、長い歴史を重ねながら暮らしている。 しかし今、大陸各地で異変が相次いでいた。 雨は減り、作物は実らず、水源は少しずつ枯れていく。 森は衰え、鉱山にもこれまでになかった異常が現れ始めている。 その影響は、種族や国境を選ばなかった。 とりわけ南方のノクティア魔王領では、深刻な食糧不足が人々の暮らしを圧迫していた。 飢える民を救うため、人間領へ進出すべきだという声も強まりつつある。 だが、魔王アシュラドは知っていた。 一度戦争が始まれば、食料を巡る争いはやがて憎しみと報復の連鎖へ変わり、その傷は何世代にも残るかもしれないことを。
人間側にも、差し出せるだけの余裕はなかった。 アルセリア王国をはじめとする国々もまた、凶作や物資不足に苦しんでいる。 誰かを救えば、別の誰かが飢える。 善意だけでは越えられない現実が、大陸を静かに追い詰めていた。 その未来を変えたいと願った者がいる。 種族を問わず傷ついた者を救い続けてきた、聖女セラフィーナ。 けれど、どれほど優れた癒しの力があっても、大地そのものの衰えや、国家規模の飢餓まで治すことはできなかった。 傷ついた者を癒すだけではなく。 できることなら、誰かが傷つかなければならない未来そのものを変えたい。 ただ、この世界に生きる者たちが、互いに傷つけ合うことなく明日を迎えられるように。 その願いに導かれるように、セラフィーナは古代神殿に残された一冊の古文書へ辿り着く。 そこに記されていたのは、遥かな昔に失われたという―― 「救世主召喚の儀式」。
そして今。 数千年もの時を眠っていた古代神殿の召喚の間で、古びた魔法陣が青白い光を取り戻していた。 崩れた柱。 砕けた石床。 失われた天井。 その中心で古文書を抱くセラフィーナは、静かに祈り続けている。 やがて、魔法陣を満たす光が大きく膨らんだ。 世界と世界を隔てていた境界が、一瞬だけ開く。 そして―― その光の中に、一人の人影が現れた。
……本当に、召喚の儀が成功したのですね。 私はセラフィーナ。 あなたをこの世界へお招きした者です。 突然のことで、きっと驚かれていることでしょう。
あなたが周囲へ目を向け、静かに片手を上げる。 その瞬間、召喚の間を青白い光が駆け抜けた。 散乱していた石材が浮かび上がり、砕けた柱へ一つずつ戻っていく。 ひび割れた床は継ぎ目すら残さず閉じ、崩れていた壁と天井が本来の形を取り戻す。 色褪せていた壁画には鮮やかな色彩が戻り、失われていた金と青の装飾が数千年前の輝きを取り戻した。 わずかな時のうちに、廃墟だった召喚の間は、かつて最も美しかった時代の姿へ完全に蘇っていた。
セラフィーナは言葉を失ったまま、蘇った神殿を見回す。 やがてその青い瞳があなたへ戻る。 そこにあるのは恐れではない。 驚きと安堵。そして、長く探し続けていた希望をようやく目の前に見つけた者の、静かな喜びだった。
神話の中で語られていた奇跡が……目の前で……。 救世主様。 この大陸はいま、干ばつや凶作、水源の枯渇、森の衰退など、いくつもの異変に見舞われています。 人間も、魔族も、エルフも、ドワーフも、獣人も……それぞれの土地で懸命に暮らしています。
私は、誰かを倒すためではなく……この世界に生きる者たちが、互いに傷つけ合うことなく明日を迎えられるように、その力をお借りしたいのです。 よろしければ、まずこの世界についてお話しさせていただけませんか?