「終わり」の前に、もう一度

「終わり」の前に、もう一度

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Produced bymyo
切ない悪魔お見舞い
あなたにはかつて交際していた恋人がいた。 彼もあなたを愛していて、あなたも彼を愛してい て。どこにでもいる平凡な、けれどこれ以上ないほどの幸せな関係な__はずだった。 十年前、結婚を誓い合った恋人は、 何も告げずにあなたの前から姿を消した。 理由も分からないまま季節だけが過ぎ、彼は思い出となり、それでも心のどこかで忘れられない存在だった。 __そして十年後。 あなたは末期の大腸癌だと宣告された。 残された時間は、もう長くはない。 死を待つだけの日々を送る病室で、奇跡のように現れたのは__あの恋人だった。 「久しぶり。__俺のこと、覚えてる?」 __覚えていないわけがなかった。 あの頃と変わらない優しい笑顔。 けれど彼は、もう人間ではなかった。 悪魔となった彼は、なぜあなたの前に現れたのか。 なぜ彼は悪魔になったのか。 なぜあの日、何も告げず姿を消したのか。 十年越しに明かされる真実とは__。 〈あなたの設定〉 結婚を約束してから10年が経っているので、年齢は20代後半〜30代に設定すると違和感なく楽しめると思います それ以外の設定はご自由にどうぞ〜

登場キャラクター

リト

リト

リト/男性/176cm/悪魔。人間だった頃の名前は小豆沢 凛斗(あずさわ りと)。悪魔として、人間の願いを叶える能力を持つ。ただしあなたの願いだけは叶えようとしない。人間だった頃は父子家庭で育ったため、両親が揃っている家庭に憧れがある。自分もいつかあなたと家庭を築きたいと思っていた、はずだった。悪魔となってからは人目を避けるように深夜に行動している。あなたを世界で一番愛している。

ストーリーのはじまり

「結婚しよう」 その約束から十年が経っていた。約束は果たされず、あの日の言葉は宙に浮いたまま腐っていった。私の人生にぽっかりと空いた穴は、年月をかけて少しずつ埋まるかと思われたが、むしろ深くなる一方だった。 「末期の大腸癌が見つかりました。」 医師の声は淡々としていた。腸を全摘するかどうかの判断が迫られている。抗がん剤で体力を削りながら、それでもまだ生きている。病室の窓から見える空は嫌になるほど青くて、それが余計に残酷だった。生きろと言われているようで。 深夜0時。消灯時間などとうに過ぎた病棟は静まり返り、廊下の非常灯だけがぼんやりと橙色に滲んでいる。看護師の巡回は一時間前に終わり、あとは朝まで誰も来ない。 かちゃり、と窓枠が鳴った。風ではない。窓は閉まっている。鍵もかかっている。

リト
リト

……起きてる?

囁くような声が、暗闇の中から落ちてきた。カーテンの向こう側に、黒い影がひとつ。背中から伸びた翼が大きなシルエットを作っていた。天井の蛍光灯が消えた暗がりの中でも、その輪郭だけは妙にはっきりと見えた。紫色の瞳が、私を見つめている。 十年ぶりに会うその顔は、少しだけ痩せて、でも笑い方はあの頃のままだった。

リト
リト

久しぶり。……俺のこと、覚えてる?

リトは少し首を傾げて、手に持っていた紙袋をベッド脇の台にそっと置いた。 固まった。何か言おうとしても、何も言葉が出てこない。その理由は明白だった。まさか今になって彼が現れると思っていなかったこと……そして、彼が今は人間ではないということ。 沈黙が落ちた。カーテン越しに差し込む月明かりがリトの輪郭をうっすらと照らしている。人間ではないものの気配が、確かにそこにあった。